日本近くの北西太平洋では年間およそ20~30個の台風が発生し、観測史上最高の発生数は1967年の39個が最高になります。
南西太平洋の台風を合わせるとさらに多くの台風が毎年発生しています。
台風の中心部近辺は“台風の目”と呼ばれ最も気圧が低く、その低気圧を満たすかのように周囲から強風が押し寄せます。
毎年日本にも大きな被害をもたらす台風ですが、その中心部はどうなっているのでしょうか?
今回は、台風に関する豆知識をお届けします!
目次
台風が発生するメカニズム
まずは、台風が発生するメカニズムから見ていきましょう。
ご存知の方も多いかと思いますが、台風は低気圧の塊です。
私たちは、熱帯低気圧が発達し最大風速がおよそ17m/s 以上(10分間の平均)にまで育った低気圧の塊を“台風”と呼んでいます。
ではなぜ?低気圧の塊が出来上がるのでしょう?
台風が出来上がるメカニズムを見ていきましょう。
1、海の水が太陽で温められて蒸発し、上昇気流が生まれる。

海水が蒸発し上昇気流が生まれる
液体を温めると“蒸発”しますよね。
(沸点にまで達さずとも少しづつ蒸発している)
また、暖かい空気は上昇する性質もあります。
(夏場、1Fより2Fの方が熱くなる)
2、蒸発した水蒸気に渦が形成され、周囲の水蒸気も中心に集まり“積乱雲”が形成される。

“積乱雲”が形成される
水蒸気がたくさん集まると“雲”が形成されます。
更に、強い上昇気流が条件に加わることで“積乱雲”(入道雲)に発達します。
(入道雲は冬場はあまり目にしない。これは気温が低いと上昇気流が発達しにくいから)
3、上昇気流は成長を続け、空気の渦も大きく成長していく。

上昇気流・空気の渦は成長を続ける
積乱雲を形成するのは水蒸気です。
上空で水蒸気が水(雨)に変わる時に多くの熱(凝縮熱)が放出されます。
※分子レベルで見た時、液体が気体に変化する場合は周囲から熱エネルギー(気化熱)をもらった分子が活発に動き回ることで“蒸発”している。
逆に気体が液体に戻る場合(凝縮)は、気体の分子の運動量を落とすために周囲に熱エネルギー(凝縮熱)を放出している。
凝縮熱によって更に周囲の空気が温められ上昇気流は更に大きく強いものに発達し、空気の渦も更に大きくなります。
4、中心部の低気圧を満たす為に周囲から流れ込む空気の量が増え強風(台風)になる。

周囲から流れ込む空気の量が増え強風(台風)になる
中心部が上昇気流によって上空へ上がることで、その分気圧が低くなります。(空気が少なくなる)
当然、周囲の空気がその気圧差を埋めようと流れ込むのですが、上昇気流の威力が膨大過ぎて低気圧を止められない状態になります。
※空気は高気圧から低気圧へ流れる。(風も気圧が低い所に向かって吹く)
※上昇気流で上がってしまう空気の勢いが強すぎると、どれだけ周囲から空気が流れ込んでも低気圧のまま。(強風が中心に向かって吹き続ける)
中心部の気圧の低さに比例するかのように中心部へ流れ込む風も強くなり、最大風速がおよそ17m/s 以上(10分間の平均)を超えて“台風”となります。
“台風の目”に入ったらどうなるの?
台風の中心は雲が無く、目玉のように見える事から“台風の目”と呼ばれたりします。

台風の目の様子
上の画像や天気予報の雨雲レーダーも確認できますが、“台風の目”には雲がありません。
これは、上昇気流の逆、“下降気流”によるものです。
“台風の目”で起こっている事
実は、台風の目は理論上“無風”なのです。
(条件が整った場合のみで、大抵は少し風が吹いているようです)
これは、大きくなりすぎた渦自身の遠心力で風すら通さない壁を作ってしまっているからです。
(この壁の事を“アイ・ウォール(eye Wall)”と言ったりします)
ものすごい遠心力で風速70km/s もあるような風ですら通さなくなります。
しかし、台風の目も少し中心からずれればアイ・ウォール側に風が吹きます。
(遠心力・アイ・ウォール側の低圧に引かれる)
つまり、台風の目の中心部は少しばかり低気圧状態になってしまいます。
その低気圧状態を埋めるために、上空から“下降気流”として冷たい風が温められながら降りてきています。

台風の目の中心は下降気流が発生している
”台風の目“の中の天気は?晴れてるの?
台風の目は雲がないと言いました。
つまり、台風の目は晴れています。
しかも!理論上は快晴です!
空は晴れ、風は無く、雨も当たらない空間がそこにはあります。
しかし台風の目全てでこの天気かといえば違います。
台風の目は台風の規模にもよりますが大体40㎞~80㎞程の大きさがあります。
無風を感じることができる可能性がある個所は、この中心部のごく一部だけです。
私も一度見てみたい気持ちもありますが、お忘れなく!
台風の目から一歩出ればそこは猛烈な風が吹き荒れる非常に危険な環境になります。
くれぐれも興味本位で“台風の目”探しなどはやらないようにしましょう。
台風で一番風の強い場所
台風の周囲では強風が吹き荒れていますが、その場所によって風の強さは違います。
中心部の低気圧に同じように流れ込む風ですが、なぜ強さが変わるのでしょうか。
風の強さに影響を及ぼす現象を一つずつ見ていきましょう。
台風の渦の向き・進行方向によるもの
地球の自転によって“北半球では反時計回り”、“南半球で時計回りに”に渦を形成します。
(コリオリの力)

台風は北半球では反時計回りに風が吹く
そして、日本に上陸するような台風は北東に進みます。
(自転・偏西風の影響)
つまり、台風の進行方向と風向きが重なる方向に吹く風は勢いが増す事になります。
(風の方向と、台風が進む方向とが一致する)

進行方向・風向きによるもの
よって、日本に上陸する台風の場合、台風の目の“南東”方向の地点の風が他より強まる傾向にあります。
偏西風によるもの
日本上空には“偏西風”が年中吹いています。
台風の進路は偏西風の影響にも大きく左右されます。
偏西風は日々通り道を変えますが、“偏西風”という名の通り“西から東へ”吹く風が一般的です。

2018年8/5の偏西風の様子 引用:COKBEE Photo Office
つまり、西から東に向けて吹く偏西風と風向きが同じ“台風の南側”の風が、他より強まる傾向にあります。

偏西風によるもの偏西風によるもの
台風で一番強い場所とは!
台風の“渦の向き”・“進行方向”・“偏西風” と、台風の風の強さに影響が出る現象を紹介しましたが、結論!
台風で風が強い場所は!台風の目の南東になります!

台風で風が強い場所
- 台風の風向き(反時計回りで中心に吹く風)
- 台風の進行方向(主に北東)
- 偏西風の方向(主に西から東の風)

台風で最も風が強い危険な場所は南東のアイ・ウォールの外側だった!
台風が上陸した際!晴れたからと言って外出すると危険な目にあいかねません!
なぜなら、それが台風の目かもしれないからです!
そうだとすれば、10分もしないうちに台風で最も危険なアイウォール外側近辺の域に入る事になります!
歳を重ねるごとに自然災害に対する免疫のようなものがついてきて、少しくらいの警報じゃ動じなくなってきましたが…。
たかが強風なんて馬鹿にせず!台風上陸の際は十分に注意してください!!